【高齢化社会の課題】おひとり様高齢者の老人ホーム入居問題高齢者にとっての理想的な住環境とは?
■はじめに
日本は急速に高齢化が進み、多くの高齢者が自分の終の棲家を老人ホームに求めるようになっています。しかし、特におひとり様高齢者にとって、老人ホームへの入居には様々な課題が伴います。費用面の問題をクリアしても、入居そのものが難しいケースも少なくありません。本記事では、その理由と対策について以下の順番で詳しく見ていきます。
- 老人ホームの現状
- 老人ホームへの入居に関する問題
- 保証人がいない場合の対策
- 今後の展望
- まとめ
1.老人ホームの現状

厚生労働省の『令和4年 人口動態統計(確定数)』によると、2022年に亡くなった65歳以上の高齢者のうち、最も多くの人が病院で亡くなり、その割合は64.7%です。次いで自宅が16.3%、老人ホームが11.9%、介護老人保健施設が4.3%となっています。年齢が上がるごとに、病院や自宅で亡くなる割合は減少し、反対に老人ホームで亡くなる割合は増加します。
年齢別・高齢者の死亡場所の割合
年齢 病院/老人ホーム/自宅
65~69歳 68.3% 2.63% 25.49%
70~74歳 69.6% 3.61% 23.06%
75~79歳 70.7% 5.30% 19.75%
80~84歳 70.0% 7.75% 16.79%
85~89歳 67.0% 11.67% 14.01%
90~94歳 60.9% 17.13% 12.78%
95~99歳 52.3% 23.32% 13.04%
100歳以上 40.4% 30.10% 15.40%
また、男女別に見ると、男性は69.7%が病院で亡くなるのに対し、女性は59.7%と10ポイントの差があります。老人ホームで亡くなる割合は、男性が7.3%、女性が16.5%と女性の方が倍以上の割合です。この差は、特に85歳を超えると顕著になります。これは、多くの女性が80代で夫を亡くし、終の棲家として老人ホームに入居するからだと考えられます。
2.老人ホームへの入居に関する問題

■費用面の課題
老人ホームに入居するためには、それなりの費用が必要です。厚生労働省の調査によると、遺族厚生年金の平均受給額は約8万円程度で、専業主婦の場合、これに自身の年金を合わせて月14万円程度を受け取っていると想定されます。老人ホームには「入居金ゼロ」というところもありますが、多くの場合、初期費用と月々の費用が必要です。
■保証人の必要性
さらに、入居に際して問題となるのが保証人の存在です。夫を亡くした80代の妻や、生涯独身だった高齢女性は、身近な親族がいないことが多く、保証人を立てることが難しいのです。総務省の『高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)』によると、病院や施設の9割以上が、入院・入居の希望者に身元保証人を求めています。これは、身寄りのない高齢者にとって大きな障壁となります。
3.保証人がいない場合の対策

■成年後見制度の利用
保証人がいない場合には、成年後見制度を利用することが考えられます。この制度を利用すると、報酬として月2万~6万円程度が必要です。成年後見人が高齢者の生活全般を支援し、法律的な手続きを代行してくれます。
■身元保証会社の利用
もう一つの選択肢は、身元保証会社を利用することです。これには、死後の事務手続きも含めて、100万~150万円程度が相場です。これらの費用を「老人ホームへの入居費用+α」として見積もり、事前に準備しておくことが大切です
■専門家による保証人就任、死後事務委任契約、その他アドバイスが重要な理由
保証人探しに苦労しているおひとり様高齢者には、専門家による保証人就任、死後事務委任契約、その他アドバイスの活用が有効です。
■専門家による保証人就任
成年後見人や専門家が保証人になることで、施設側も安心して入居を受け入れることができます。また、専門家は、入居者が入居後の生活においても、適切なサポートを提供することができます。
■死後事務委任契約
死後事務委任契約は、亡くなった後の事務手続きを専門家に依頼する契約です。遺品整理、葬儀の手配、役所への手続きなど、様々な事務手続きを専門家に任せることで、おひとり様でも安心して亡くなることができます。
■その他アドバイス
専門家は、老人ホーム選びや入居手続きに関するアドバイスも行うことができます。おひとり様高齢者は、事前に専門家に相談することで、自分に合った老人ホームを見つけることができ、スムーズに入居することができます。
4.今後の展望

今後、高齢化・少子化・非婚化が進展する中で、身元保証をする親族を持たない高齢者が増加することが予想されます。この状況を受け、老人ホーム側の柔軟な受け入れ態勢が期待されますが、個々人も「たったひとりで死んでいく」リスクを意識し、事前に周到な準備をしておくことが求められます。専門家による身元保証や死後事務委任契約を結ぶことで、安心して老人ホームに入居するための準備を整えることができます。
5.まとめ

おひとり様高齢者が安心して暮らせる社会を目指すためには、事前の準備が何よりも重要です。保証人がいない場合の対策として、成年後見制度や身元保証会社の利用を検討し、必要な費用を見積もっておくことが大切です。専門家の支援を受けながら、将来に向けての準備を進めていきましょう。